ベンチャー企業の成長段階は、よく「シードステージ」「アーリーステージ」「ミドルステージ」「レイターステージ」の4段階で表現されます。
それぞれの成長ステージで、よく問題になることや注力すべき課題があり、常にどの企業にも共通するわけではありませんが各ステージの特徴を理解しておくほうが望ましいです。
そこで、この記事では特に「レイターステージ」について言及し、レイターステージにあるベンチャー企業の状態や課題、とりわけイグジットに関して解説していきます。
目次
レイターステージとは
レイターステージは、ベンチャー企業の成長ステージ4つのうち最終段階にあたるステージのことです。
立ち上げ当初と異なり、レイターステージにまで到達したベンチャー企業は事業がすでに成長を遂げており、経営も比較的安定化。企業組織も確立し、イグジットを視野に入れる時期に入ってきます。
レイターステージと呼称するための要件があるわけではありませんが、一般的には売上高が数十億円以上に達するとされ、従業員数も少なくとも数十人以上、100人以上の規模に到達していると考えられます。
サービスは継続的に拡大し、安定した黒字によりキャッシュが生まれるようになっているでしょう。
なお、他の成長ステージに関してはこちらの記事で解説しています。
投資側から見た「シリーズC」にあたる
特に投資をする側が注目する成長指標としては「シリーズ」と呼ばれるものがあります。
投資側ということで、「シリーズ」ではベンチャー企業の拡大につれて増える株式の時価総額や資金調達額のことを指します。
シリーズA・B・Cと続き、レイターステージに相当するのは「シリーズC」とされますが、必ずしもイコールの関係になるわけではありません。
株価が上昇しているかどうか、また、その上昇幅、資金調達の規模なども判断要素となります。
そのため、レイターステージであっても、シリーズCとみなされないことはあります。
レイターステージでの資金調達
レイターステージでは、シードステージ・アーリーステージと異なり企業がすでに実績を積み上げています。そのため、一定の社会的信用が得られている状態であり、様々な資金調達の手法が選択し得るでしょう。
VCからの資金調達の難易度も下がり、金融機関からの融資も容易になっていると考えられます。
また、企業によっては外部から資金を集める必要がなくなることもあるでしょう。
一方で、戦略次第では、マーケティングへの大きな投資。大規模なプロモーションを実施するケースも出てきます。
なお、シードステージ・アーリーステージ・ミドルステージでの資金調達方法についてはこちらで解説しています。
IPOも具体的に検討し始める
レイターステージは、イグジットとして「IPO」「M&A」などを検討し始める時期でもあります。
IPOを果たすことができれば広く資金を集めることができ、社会的な信用度もさらに高められるでしょう。上場したことにより知名度を上げることにもなります。
これまでの流れとしては、ベンチャー企業のイグジット手法としてIPOを採用する例が多かったのですが、IPOをするには高いハードルをクリアしなければなりません。
また、どの企業にもIPOが適しているともいい切れません。別の手段も検討すべきです。
そこで近年はM&Aの選択肢も入れようという流れがきています。
買収されることに対してネガティブな印象を持たれることもありますが、M&Aも候補に入れて社会全体でエコシステムを構築することは政府も推奨しています。
経営者が大きな利益を得、大企業にその技術を渡すことで、双方ともにメリットが得られます。
なお、M&Aについては以下のページで詳しく解説しています。
IPOについても以下のページで詳しく解説しています。
レイターステージで生じる課題
シードステージやアーリーステージでは企業の存続に関わる「死の谷(資金の底)」問題があります。
内容は異なりますが、レイターステージにも当然課題はあります。
例えば規模が大きくなり、従業員数が増えることによって生じる内部統制の課題です。
100人以上の規模になってくると、創業当初のような経営陣とメンバーとの一体感を保つのは難しくなってしまいます。現場の従業員との距離感が広がってしまい、ビジョンの共有も難しくなってくるでしょう。
その結果、意思決定にこれまで以上の労力がかかり、柔軟な方向転換もやりにくくなってきます。場合によっては、組織としての土台ができないまま大きくなってしまうおそれもあります。
その結果、統制がとりにくくなるだけでなく、イグジットに対する障壁にもなってしまいます。
特にIPOであれば内部統制の水準を向上させることが必要ですし、定款の変更など、上場申請までにしなければならないことが多数に及びます。また、上場自体のハードルが非常に高いという問題にも直面するでしょう。
一方、M&Aの場合にはIPOのように形式的な要件を多くクリアしていくといった必要はないのですが、M&Aの取引相手がいなければ話は進められません。自社の体制を整備するだけではなく、相手企業を探し、交渉をしなければなりません。
M&Aを成功させるには、その相手方を探し出した上で、自社の事業や技術に魅力を感じてもらう必要があります。そのためにも、買収等をしようとする企業が何を求めているのか、把握することが大切です。