ミドルステージは企業の成長も進み、収益も大きくなってくる時期です。
これまでのシードステージ、アーリーステージとは大きく異なる状況となり、資金調達の在り方も変わってきます
ここではミドルステージに関して、特に資金調達の方法やそのポイントを解説していきます。
なお、シードステージの資金調達に関してはこちら、アーリーステージにおける資金調達に関してはこちらで解説しています。
目次
ミドルステージにおけるベンチャー企業の状況
ミドルステージは、事業の展開を本格的に進めていく段階です。
自社製品・サービスが認知され始め、アーリーステージと比べると倒産リスクもかなり小さくなってきます。
そのため、これまでのステージと比べると比較的資金調達は成功させやすくなるでしょう。
ただ、調達すべき額がこれまでより大きくなりますので、自己資金やエンジェル投資家の存在に頼ることはできません。数億円もの資金調達を目指さなくてはならず、それ以前とは異なる手法も検討していかなくてはなりません。
ミドルステージでの資金調達1:VCの利用
ミドルステージで本格的に活用し始めるのがVC(ベンチャーキャピタル)です。
アーリーステージでも、VCからの資金調達を検討することがありますが、よほど高い評価を得るか、自社にマッチしたVCを探さなくてはならず、ハードルは高いです。
しかし、ミドルステージではすでに実績も積んでいることが想定されていること、また、より大きな資金が必要になることから、積極的にVCと交渉を進めていくことになるでしょう。
1社ごとに相談してもいいですが、各VCを代表する「リードインベスター」を中心に交渉を進めていくのが良いでしょう。効率的に資金を集められます。
なお、VCの利用が向いているのは、株式公開を予定する企業でしょう。経営のサポートが得られますし、事業提携先を紹介してもらえるケースもあるからです。
VCには出資先が複数ありますので、そのネットワークによる恩恵を受けられる可能性があります。経験豊富なVCから他社の技術やノウハウの習得ができ、事業をより成長させやすくなります。
他方で、VCが経営方針に介入してきて、経営が制限される可能性もあります。そのためVCを利用するデメリットに関してもよく理解すること、あるいは事前に上手く交渉しておくことが大切です。
VCを利用する方法・流れ
投資してくれるVCを探し出し、審査を受け、投資条件を交渉し、契約を締結させる、という流れが一般的です。
そこで、まずは審査に向けて「事業計画書」を作成しましょう。
審査を受ける際、事業計画書の提出を求められることが考えられますので、事業の将来性等を示すように作り込みます。
また、参入する市場自体の成長性なども重要なポイントです。
あとは、経営陣が経験豊富であること、また、株式公開の予定など、VCが投資をしたいと思えるような内容を盛り込んでいきます。
審査を通過できれば、投資額や株式の発行額などの交渉に入ります。特に注意が必要なのは株式の発行額です。競合他社の株価なども考慮しつつ交渉していくことになります。
そして、条件に合意が取れればVCと投資契約を締結させます。
ミドルステージでの資金調達2:融資の利用
ミドルステージでは融資も利用しやすくなってきます。
ある程度実績を積み、VCから評価を得やすくなるのと同様、金融機関による審査も通過しやすくなるからです。
出資と比較した場合、銀行融資を受けても経営権に介入される心配は不要で、経営は自由に進めていくことが可能です。
他方、当然返済の必要がありますし、担保を立てたり保証人を立てたり、借りるために満たすべき形式的な要件がいくつかあります。
また、このことに伴い、限度額が設定されることも多く、調達の自由度はVCほど高くはありません。
融資を受けるためのポイント
融資を受けためにも、審査を通過しなければなりません。融資では返済が前提となるため、返済力、倒産のリスクなどが特に見られます。
融資を受けた後、長期に渡り返済をしていくことになり、このことが原因となりキャッシュフローを圧迫。倒産に追い込まれる可能性があるからです。
そこで、融資を受けるための事業計画書では、資金使途および必要金額を明確化しておくことが大切です。
漠然と「事業拡大のために○○万円が必要」とするのではなく、「○○のために○○を導入するが、そのために○○万円が必要」などと詳細度を上げなければなりません。
あるいは「一月に○○万円の経費がかかるため、○○ヶ月分、○○万円の運転資金を貸してほしい」といった書き方です。
できるだけ使い道や希望額は明確にし、その金額に妥当性があると評価してもらえるようにしましょう。
また、資金繰り表も作成しますが、事業計画書の内容に沿ったものでなければ評価を落とすことになってしまいます。
これらはいずれも審査において非常に重要な資料となるため、税理士など、専門家のサポートを得ながら作成を進めていくべきでしょう。
なお、企業の評価に際しては、事業計画書や資金繰り表のみならず、収益性・安全性・成長性なども見られます。これらに関しては、黒字決算かどうか、資本と負債のバランス、売上の大きさや伸びなど、評価がしやすく自社でも把握がしやすいです。
そのため実際に審査を受ける前から、融資を考慮した企業活動に取り組むことも大切です。
また、銀行と良好な関係を築いておくことで資金調達を成功させやすくなります。給与口座として利用したり、少額融資を受けたり、普段から取引をしておくと担当者とも顔見知りになり、信頼も得やすくなります。