ベンチャー企業と大企業のM&A!買収のプロセスを解説

大企業によるスタートアップ、ベンチャーとのM&Aを促進することが、双方の価値向上に繋がるとされています。

ベンチャー企業にとっても、株主に対するイグジットを担保することになり、安定した成長にも資することとなります。大企業としてもオープンイノベーションを起こすことができ、経済産業省もこの取り組みが双方にWin-Winの関係をもたらすと評価しています。

そこでこの記事では、第一歩となるよう、ベンチャー企業を買収する場合のプロセスを整理していきます。

目次

STEP1:M&Aの相手企業を探す

まずは、買収の候補となるベンチャー企業を探し出さなければなりません。

その方法としては大きく2つ挙げられます。

  1. 買収を目指す大企業が自ら探索
  2. VCやベンチャー企業からのアプローチを受ける

自社探索をする場合、買収担当部署等が探索を行うことが多く、既存事業領域から適切なベンチャー企業を探索することもあるものの、新規事業領域に適したベンチャー企業の探索が中心になるという特徴があります。

また、展示会など、イベント出展企業や大学発のベンチャーが対象となることも多いとされています。

事業部等からボトムアップを受けることもあります。このケースでは既存事業領域の中から、拡大に適したベンチャー企業を探索することが多いです。ここで重要になるのは、 「獲得したい技術を有しているか」という視点です。

他方、VCやベンチャー企業からのアプローチを受けることもあります。
ただ、VCからの紹介はあっても、CVCを設けていなければベンチャー企業からのアプローチは多くないでしょう。
ベンチャー企業との出会いがあっても、ベンチャー企業側は出資を得ようとしていることが多く、その時点でM&Aを意識していることは少ないです。

STEP2:DD(デューデリジェンス)を実施

買収の候補がいくつか出した後は、DD(デューデリジェンス)により問題のない企業かどうかを見極めなくてはなりません。

ただ、一般的な企業に対するDDと異なり、ベンチャー企業が相手の場合、十分な情報が集められないケースも多いです。そのためスピードを意識した簡易なDDを行うこともあります。

STEP3:M&A(買収)の交渉

候補が決まり、社内でも買収判断が確定すれば、M&A、買収の交渉に進んでいきます。

買収判断において、既存事業のさらなる成長を狙いとするケースでは、「ベンチャー企業の事業によりシナジーが生まれるかどうか」が1つポイントになってきます。

また、交渉を成功させるためにはスピード感も大事です。

買収されるベンチャー企業側は、DDを含む交渉の期間が長くなってしまうことにより事業への支障を不安視します。特に大企業との交渉となれば複数部署と交渉を行うことになり、手間も時間もかかってしまい、買収を消極的にさせてしまう一要因になってしまっています。

そのため大企業がスピード感を持って取り組み、自社の組織体制が原因でベンチャー企業を悩ませることがないように配慮しなければなりません。

なお、実際にM&Aを行う前に、出資を先立って行うこともあります

特に新規事業への拡大を狙いとしている場合には、ベンチャー企業の事業に対する評価が難しいからです。
そこで、出資から始めてベンチャー企業への理解を深めるということも行われます。また、その期間はベンチャー企業との良好な関係を築くことにも役立ちます。

STEP4:PMI(経営の統合)

M&Aの交渉が成立してもまだ終わりではありません。

本来的にはここからがスタートなのであり、M&Aが結果的に失敗とならないよう、統合効果を最大化するための取り組みが重要です。

こうした経営の統合を「PMI」(ポスト・マージャー・インテグレーション)と呼びます。

M&A後の統合プロセスのことで、経営統合・業務統合・意識統合から構成されます。

具体的には、「M&Aで取得したベンチャー企業をどのように統治していくのか」ということがポイントになってきます。

大企業側が、買収したベンチャー企業を自社の部門とするケースは少ないです。多くは子会社化しています。

というのも、企業統治に関してベンチャー企業側をいきなり取り込むのではなく、ある程度の自由度を認めようとする傾向があるからです。

ただ、統治についてはよく検討しなければなりません。
状況に応じた手段を取らなくてはならず、例えばベンチャー企業の自由度を大きくしてしまったことで自社ブランドが棄損するリスクも発生します。そのリスクが大きいと評価される場合には完全に大企業側のルールに従わせる必要性が高いです。

しかしながら、その場合には大企業側もルールを明確に示すことが大切で、曖昧なルールに従わせることでベンチャー企業が負担を感じることもあります。

人材留保についてもどの程度縛るのか、要検討です。
自由度を高くすることで留まってもらうのか、あるいは契約により強く縛るというやり方もあります。例は少ないですが、ベンチャー企業の経営人材に対して親会社の役員ポジションを与えることで留まってもらうという手法もあります。