ベンチャー企業が押さえておきたいシードステージでの資金調達のポイント

創業前のベンチャー企業は「シードステージ」と呼ばれる最初の成長ステージにあります。

まだ事業計画を策定する段階であり、資金需要もそれほど大きくありませんが、シードステージにおける取り組みがその後の活動に大きく影響してきます。

ここでは資金調達の観点から、シードステージで経営者が押さえておくべきポイントを紹介していきます。

目次

シードステージで問題視すべきこと

シードステージでは、ベンチャー企業は主に計画や方針の策定、より詳細には、プロダクトの開発などを行います。そのためこの時点では大きな資金が必要とならないことも多いですが、ここでの準備行為や調達方法がその後の成長ステージに大きく影響し、成長スピードを緩めてしまうこともあります。

事業を軌道に乗せるための仮説検証などが上手くいかず、計画が後ろ倒しになると余計に時間や手間がかかり、想定より外部の株式シェアが大きくなってしまうこともあります。

また、シードステージでの資金調達が不十分で、続いてのフェーズに移行できないというケースも起こり得ます。

シード期のポイント1:事業仮説を細かく設定する

事業の見定めが上手くできていないと、軌道修正に時間がかかる上、調達した資金を使い果たしてしまうことがあります。
そうすると、当然、倒産のリスクも高まりますし、この状態を立て直すのにも労力がかかります。

こうした事態を避けるには、調達までにできるだけ事業の解像度を上げるということが大事です。

また、狙う事業領域が投資家視点で有望かどうかも見直しましょう。
サービス内容がトレンドに即しているか、社会的なニーズの大きさ、競合の混み具合もチェックポイントです。

マーケットの大きさだけで判断しないよう注意しましょう。
マーケットが大きくても、競合が多かったりニーズが大きくなかったりすると、有望な領域とは判断されません。逆に小さなマーケットでもトレンドに沿っている場合などには投資家の支援を得やすくなります。

シード期のポイント2:必要な資金の想定

事後的により大きな調達が必要だったと発覚してしまうと、株式シェアや事業スピードに問題が生じやすいです。

そのため、次の成長ステージに移行するまでのシナリオを精度高く作り上げ、そのシナリオ実現にはどれだけの資金が必要なのか想定しなければいけません。
算定された資金より少し多めに調達できるとより良いです。

その際、出資をしてもらうベンチャーキャピタルや個人投資家にアドバイスをもらい、追加投資に対するスタンスも確認すべきです。
シード後の成長ステージで出資を考えている投資家にも意見をもらっておくと良いでしょう。

シード期のポイント3:調達コストを下げる

シード期における資金調達も非常に重要ですが、本来的には事業計画やプロダクト開発に注力する段階です。
そのため資金調達に際しての契約はシンプルなものとすべきです。

リーガルチェックに金銭的・時間的コストをあまりかけないようにしましょう。

ただ、当然ながら投資契約の内容を吟味せずに締結してはいけませんし、投資契約なく投資を受けるのもリスキーです。

ベンチャー投資での投資契約はほとんどの場合投資家側の要望によって締結しますが、発行会社としては投資家側の事情に理解を示しつつも「自社が過大な負担を負わないか」「過度に不利益な立場に立たされるような条項はないか」という点を審査しなければいけません。

例えば、株式の種類やその数、価格、払込期日、資金の使途、投資実行の要件、契約違反があったときの取り決めなどが定められます。

コストは抑えたいところですが、「この条項の意味がよく分からない」「相場かどうかの判断、一般的な条件の程度が分からない」という方はベンチャーファイナンスに知見を持つ弁護士に相談しましょう。

なお、シード期で利用しやすい資金調達として「みなし優先株」があります。

これは普通株式として発行し、その後資金調達ができれば優先株式に転換するというものです。発行のコストが低い上種類株主総会の開催が不要であるため運営上のコストもあまりかかりません。
全株主の合意が必要であるため株主の数が増えてくるその後の成長ステージでは発行が難しくなりますが、株主数が少ないシード期では比較的利用しやすいです。投資家の権利保護にも繋がりますし、資本での調達ということで債務超過にも陥りにくいです。

シード期のポイント4:経営権に配慮した株式発行

シード期で第三者に対して多くの株式を発行してしまうと、それ以降の資金調達において新規投資家の参画が阻害されるおそれがあります。

一度株主となった者を排除するのは困難ですので、最初の資金調達の段階から「誰にどれだけ株式を発行するか」を厳格に検討することが大切です。

必要以上にシェアを確保しようとしてくる場合には要注意です。
100万円や200万円程度の出資で1割以上のシェアを取ろうとしてくる場合には将来の運営に悪影響を及ぼす可能性があります。

シード期のポイント5:創業メンバーで株主間契約を締結する

会社を立ち上げたメンバー同士でも株主間契約は大切です。

特にシード期はまだまだ事業内容も流動的であるため、方針が一致せず、離脱するメンバーが出てくることもあります。これが株主として残っていると買い取り時に負担となることがあるのです。

信頼できるメンバーであっても、万が一に備えて株主間契約を締結し、契約書も作成しておきましょう。