ベンチャー企業における成長ステージ4つの概要とポイント

ベンチャーとは新たな事業への挑戦といった意味合いを持つ概念で、短期間での成長を狙ったり、新しいビジネスモデルでの開拓を狙ったりする企業を「ベンチャー企業」と呼ぶことがあります。
長く活動を続けてきた大きな企業に比べて成長のスピードが速く、目まぐるしく状況が変わるため、企業が取るべき戦略も成長に合わせて変えなくてはなりません。

そこで重要になるのがベンチャー企業の成長ステージです。
ここでは各成長ステージの特徴や資金調達との関係を説明していきます。

目次

ベンチャー企業における「成長ステージ」とは

ベンチャー企業が急成長を遂げ、事業を成功させる上では、資金調達がキーとなってきます。

しかし、信頼を積み上げてきた企業と違い歴史の浅いベンチャー企業は投資を得るのが簡単ではありません。
また、企業の在り方も急速に変化していくため、そのときどきで適切な戦略を立てていかなければ調達できた資金の有効活用はできません。

そこで、投資の観点から企業を評価した「投資ラウンド」という概念があります。

シリコンバレー発祥の考え方ですが、日本でもよく使われています。
多くの場合5つの段階に分けられ、「シード」「アーリー」「シリーズA」「シリーズB」「シリーズC」という投資フェーズから成ります。これは投資目的が果たせるように、投資家目線で企業の状態を示す指標として機能しています。

さらに、明確な定義はなされていませんが、投資評価なども含めて広い視点で企業の成長段階を表した「成長ステージ」があります。事業の進捗など、より一般目線で見た企業の成長指標と捉えることができます。

こちらは「シード」「アーリー」「ミドル」「レイター」の4つに分けられ、ミドルにシリーズA・Bが該当する形でおおよそ投資ラウンドとも対応します。

ベンチャー企業を経営する方やこれを評価する投資家はこの成長ステージを知り、それぞれの特徴を捉えておくことで企業の状態を把握しやすくなります。成長段階に合わせて、経営者は方針の策定を、投資家は適切な評価を行いやすくなるでしょう。

第1段階:シードステージ

シードステージ」は創業の前段階にあたります。

商品やサービスとして出来上がってはいないものの、コンセプトやビジネスモデルは決まっていることが想定されています。

そこで、シードステージにおいては事業計画の策定や経営のチーム作りが重要になってきます。同時に、具体的なサービスの準備をするため、市場調査なども行います。

なお、この段階で大きな資金需要はないため起業家が一人で資金(シードマネー)を用意することも多いです。ただ、規模が大きくなってくるとこれだけで対応できないため、FFマネーと呼ばれる資金を集めるケースも多いです。FFはファミリー&フレンズの略で、家族や友人などを頼りにした投資を意味します。

シードステージにおけるポイント

シードステージは投資ラウンドにおける「シードラウンド」にあたります。

融資を得るのは難しいため上記の自己資金やFFマネー、さらに大きな規模であれば個人投資家やクラウドファンディングの活用も視野に入れることになるでしょう。

ここでポイントになるのが「シンプルな契約」とすることです。金銭的にも時間的にも調達のコストを下げ、プロダクトの開発などに注力すべきステージだからです。
資金調達に力を入れ過ぎるとリーガルチェックにもコストを費やさなくてはなりません。

また、株式の発行による資金調達をする場合には、その後の経営権に支障がない範囲に留めておきましょう。
割合多く発行してしまうと、重要な決定事項を決めるのに投資家の同意を得なくてはならなくなり、迅速な意思決定ができなくなってしまいます。

第2段階:アーリーステージ

成長の第2段階にあたるのが「アーリーステージ」です。

創業直後で、多くの資金を要するフェーズです。運転資金、設備の資金、販売促進などに多くのお金が必要ですが、売上が少ないため事業リスクも高いという特徴を持ちます。
また、特許など、知的所有権の獲得に向けた準備活動もアーリーステージで行われることが多いです。

ただ、社会的信用もまだないため、シード同様融資を受けるのも簡単ではありません。規模の大きな企業から受注したり、本社があるなら資金援助をしてもらったり、柔軟に資金調達をしていく必要があります。

アーリーステージにおけるポイント

人材も必要になってくるステージですが、コスト等の問題から、雇用ではなく業務委託で知見・ノウハウを確保するのも一つの手です。

関係を解消しやすいですし、雇用保険や社会保険への対応もする必要がありません。

ただしこの場合、企業との結びつきが弱くなってしまいます。積極的にコミットしてもらうため、株式を持ってもらうということも有効でしょう。

第3段階:ミドルステージ

ミドルステージ」は第3段階にあたります。

軌道に乗り始めており、本格的に事業を進めていくフェーズです。
より売上を拡大していくため、人材の追加、設備投資などにも資金が必要になります。これまでの成長ステージと異なり利益が出始めますし、信用も得られるようになりますが、支出も多い時期です。

人材に関しては雇用も積極的に進めていきます。そのため就業規則の整備や、労働の環境を整えることも重要になってきます。

ミドルステージにおけるポイント

ミドルステージにおいてはリスクが低減していることから融資も受けやすくなってきます。ベンチャーキャピタルによる投資も受けやすくなりますので、億単位の調達をするなど大きな資金の調達がポイントになってきます。

従業員数が増えることからコーポレート体制の見直しもポイントになるでしょう。

第4段階:レイターステージ

第4段階が「レイターステージ」です。

経営が安定するフェーズで、資金調達のハードルは下がります。銀行などから融資を受けたり、株式発行による出資を受けたり、方法も多様化してきます。調達額も数億から十数億円に達してくるでしょう。

レイターステージにおけるポイント

レイターステージにまで来ると、上場も考え始める時期です。

このIPOをどのタイミングで行うかがポイントになってきます。早いほど良いとも限りませんが、早期に競争力を高める必要があるなら、IPOによる資金調達を検討しましょう。