近年、パワハラに対する世間の関心が高まっています。パワハラ問題がニュース等で取り扱われることが増えていますし、SNSによって個人による告発が簡単にできるようになっていることも関係しています。
事業者としては従業員が働きやすい環境を提供するため、そして企業イメージを下げないためにもパワハラ問題に取り組まなくてはなりません。そこでまずは「パワハラ」がどのような意味を持つのか、どのような行為が該当するのか、定義をしっかりと理解しておきましょう。以下で簡単に解説していきます。
目次
パワハラとは?
パワハラとは「パワーハラスメント」のことで、厚生労働省が公表している「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」では、職場でのパワハラを以下のように定義しています。
同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為
職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告:https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000021hkd.html
さらにその行為の類型がいくつか分けられており、身体的なものから精神的攻撃、他にも人間関係を切り離す行為やプライベートへの介入などもここに含まれています。また明らかに必要のない仕事を命じたりスキルとあまりにも見合わない仕事を求めたりすることも該当し得ます。
パワハラ行為の例
具体的な例としては、叩いたり蹴ったりする行為が挙げられます。これは身体的なものとして代表的ですが、身体へのダメージが大きいものである必要はありませんので、小突く程度でも該当することがあります。
他の社員がいる前で叱責したり、長時間にわたって執拗に責めたりする行為も該当することがあります。もちろん、これらの行為に形式的に該当しただけで即座に認められるわけではありません。その他諸般の事情を考慮した上で認定可否が分かれますが、その判断が明確にできるわけではありませんので十分に注意しなければなりません。
事業者としては従業員がパワハラに該当し得る行為をしないよう、パワハラに当たる行為とは何かを伝えるとともに制度を設けるなどして対策を講じましょう。
他にも、行為類型に直接的に当てはまるものだけでも以下のような行為が挙げられます。
- 無視をする
- 別室に隔離する
- 正当な理由なく仕事を押し付ける
- 専門職としての採用であるにもかかわらず雑用だけを命じられる
- 交際相手のこと、休みの日の過ごし方などをしつこく問う
なお、いずれも定義から読み取れるように「優位性を用いている」こと、および「業務として適正な範囲を超えている」ことが求められます。そのため指示したことが業務として正当であるなら、雑用を命じたからといって認定されるわけではありません。
また優位性に関しては実質的に捉えなくてはならず、必ずしも上司から部下へ行われるとは限りません。部下から上司に対しても成立し得ます。
パワハラと他のハラスメントとの違い
他にも、「○○ハラスメント」と名付けられているものがあります。
例えば「セクハラ」は性的な嫌がらせを意味します。職場で行われる可能性もありますし、優位な立場を悪用した場合にはパワハラを兼ねるケースもあります。
「モラハラ」は精神的な暴力などが該当します。パワハラとの区別が難しいですが、こちらは立場とは関係なく該当し得ます。
「マタハラ」というものもあります。妊娠や出産に関する嫌がらせなどが該当します。こちらも職場で行われる可能性があり、パワハラと兼ねるケースもあります。
これら3つはいずれも行為の内容に着目した区別です。対してパワハラは嫌がらせの内容に着目するというよりはく、職場での優位性を悪用した行為が広く該当するものといえるでしょう。