「リモハラ」という言葉も使われるようになりました。これはリモートワークハラスメントのことで、近年導入が進むリモートワークにおいて発生するハラスメントのことを意味します。
ここでは企業に課せられるハラスメントへの対策、とりわけリモハラに関して解説していきます。2022年からは大企業のみならず中小企業も法的に義務が課されますので、ぜひ注意しましょう。
目次
リモハラに関する厚生労働省による告示とは?
リモハラに特化した内容ではありませんが、ハラスメントについて厚生労働省から告示がなされています。
法律の条文だけでは解釈の幅が広く具体的な定義や対策が分からないことがありますので、これを明確化するなどの目的で告示はなされます。
例えばセクハラに関しては、過去に
「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」として告示がなされていますし、マタハラについては
「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」として告示がなされています。
法改正は大元となるルールの変更であるため、それが重要であることは言うまでもありません。
しかし、企業等が具体的な措置を検討する際には、この告示の内容が実質的な影響を及ぼすことになります。
そして、近年のリモハラを含むハラスメントに関しては、以下の告示が重要と言えます。
- 令和2年1月15日厚生労働省告示第5号(パワハラ防止の指針)
- 令和2年1月15日厚生労働省告示第6号(セクハラ防止の指針)
パワハラ防止の指針(告示第5号)
2020年1月には、厚生労働省告示第5号(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000584512.pdf)として、職場におけるパワハラ防止に向けた指針が示されています。
そこでは「職場」や「労働者」、「優越的な関係を背景とした」の意味などを具体的に説明するとともに、パワハラに該当する具体的な言動例もまとめられています。
さらに、企業が行うべき措置に関しても取りまとめられており、雇用管理を行う企業の担当者はこの内容を把握し、適切な対応をとらなくてはなりません(具体的な措置内容については後述)。
セクハラ防止の指針(告示第6号)
前項同様、2020年1月に厚生労働省告示第6号(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000584516.pdf)
として職場におけるセクハラやマタハラ防止に向けた指針が示されています。
こちらの告示でも「性的な言動」の解釈などが明確に示されるとともに、企業が取り組むべき措置の内容などが明らかにされています。
リモハラの具体的な事例
5号告示、6号告示はいずれもパワハラやセクハラ、マタハラ一般的に通ずることです。
そこで、リモハラについてより理解を深めるため、当該告示内容と照らし合わせる形で、リモハラの具体的な行為例を紹介していきます。
まずはパワハラに該当するリモハラ例です。
- 業務の内容、時間の使い方に関する過度な説明を強要
- 生活音に関してなど、プライベート空間のことを非難
- 過度に監視しようとする行為
- 業務上必要であるにも関わらず、特定人物をWeb会議やチャットグループに招待せず、隔離
- オンライン飲み会への参加強要
ただ、パワハラに該当するには、その前提として①優越的関係が背景にある、②業務で範囲を超える、③就業環境が害される、という3つの要素が必要です。
続いてセクハラに該当するリモハラ例です。
- プライベート空間や全身を映すよう求める
- 必要以上に1対1のWeb会議を求める
- オンライン飲み会への執拗な誘い
リモートになることで、他の従業員に知られず個別に連絡をとりやすくなるため、特にこういったセクハラは発生しやすくなります。
上司に性的な意図がなかったとしても、セクハラと捉えられてしまわないか、言動にはよく注意しなければなりません。
全企業に義務付けられるリモハラ対策の内容
2020年6月1日から、大企業には、パワハラ対策を講ずることが義務化されています。
さらに、2022年4月1日からは中小企業にも義務化の範囲が広がります。そのためこれからは全企業が以下の内容に配慮しなければなりません。
ハラスメント防止方針を周知する
企業として、リモハラを防止する方針を立てなければなりませんが、上層部が把握しているだけでは不十分です。
方針を明確化するとともに、その内容を従業員に周知させなければなりません。また、パワハラ等を行った者に対しては厳正な対処を行う旨就業規則等の文書に規定し、周知および啓発することも求められます。
相談窓口を設ける
被害を受けた者が容易に相談できるよう、相談窓口を整備し、そのことを従業員に周知させることも必要です。
そして、ただ形だけの窓口担当者を配備するのでは意味がありませんので、内容や状況に応じて適切な対応が取れるようにすることも求められています。
また、パワハラに該当するかどうか微妙な案件でも気軽に相談できるような体制を整えることも重要とされています。
リモハラに対し迅速な事後対応をとる
防止策をとったとしても、ハラスメントが発生することがあります。
そこで、事前対策のみならず、事後対応も大切です。
「事実関係を迅速かつ正確に確認」「被害者に対して速やかに必要な配慮を行う」「行為者への措置を適正に行う」、そして「再発防止措置を講ずる」ということが求められます。
プライバシーに配慮する
これらを通して、相談者および行為者へのプライバシー保護も大切なことです。リモハラを防止するためだとしても、容易に個人の情報を開示すべきではありません。
また、何よりも、相談したことをきっかけに不利益な取扱いを行ってはなりません。相談の抑圧をしてしまうため、不利益処分禁止規定を設け、この規定についても全社的に周知させましょう。
ここではリモハラ含む、ハラスメント全般で取り組むべき措置について紹介しました。
リモートワークをよりよい環境で続けるためにも、ツールの適切な使い方、取ってはいけない行為例などを明示し、全従業員が快適に過ごせるように取り組みましょう。