就業規則の作成手続の流れと注意点を解説

従業員数10人以上に達した会社は就業規則を作成しなければなりません。これは法令で定められている義務です。また、法令上の義務が課せられていない会社であっても、従業員がいるのなら就業規則は作成しておくべきです。

ここで就業規則を作成するための流れ、手続内容について解説をしていきますので参考にしてください。

目次

就業規則の作成手続

就業規則の作成に関する手続は①記載事項の検討②労働者の代表からの意見聴取③届出④社内の周知、という流れで進んでいきます。

STEP1:会社側が記載すべき事項を選定する

就業規則の作成権限は使用者、つまり会社側にあります。

ただし当然ながら好き勝手にルールを定めることはできず、法令に反しないこと、従業員の理解を得ることが必要です。

そこで一方的に会社側が有利な内容だといけませんし、慎重に記載すべき事項、労働条件などを整理していく必要があります。自社における職場環境、職務内容に適したルールとは何かを考えていくのです。

STEP2:労働者の代表の意見聴取

就業規則の案が出来上がれば、“労働者の代表”の意見を聴きます。労働基準法で以下のように規定されている義務ですので欠かすことのできない過程です。

(作成の手続)
第九十条 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。

e-Gov法令検索 労働基準法第90条第1項
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

労働者の代表”とは、以下のいずれかを指します。

  1. 労働者の過半数から組織される労働組合がある場合:労働組合
  2. それ以外の場合:労働者の過半数を代表する者(事業場の労働者全員の意思に基づき選出された代表者)

なお、労働基準法で求めているのは“意見を聴く”ことです。
つまり、労働者の代表の“同意を得る”ことまでは求められていません。

あくまで意見を求めれば良いのであり、その意見の内容に拘束されて修正が強制されるわけでもありません。
ただ、労使対等が原則であることから労働者の代表の意見は十分に尊重すべきです。

STEP3:労働者の代表の意見書を添付して届出

作製した就業規則は届出をしなければなりません。

(作成及び届出の義務)
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

e-Gov法令検索 労働基準法第89条
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

さらに同法第90条第2項には、以下のように規定が置かれています。

使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。

e-Gov法令検索 労働基準法第90条第2項
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

ここでの行政官庁とは労働基準監督署長を指していますので、就業規則を作成した会社は「労働者の代表の意見書を添付した上で労働基準監督署長に届け出なければならない」ことになります。
※届出は郵送でも電子申請でも可

なお、就業規則は事業場ごとに作成が必要なのですが、本社と各事業場で就業規則の内容が同じである場合には本社所在地を管轄とする監督署にまとめて提出しても良いとされています。事業場別で聴取した意見書も一緒に提出します。

STEP4:就業規則を労働者に周知

就業規則は働く上で遵守しなければならないルールのことですので、社内の方がその内容を確認できなければ意味がありません。

そこで法律上も「各労働者への配布」または「各職場への提示」によって周知すべきことを義務としています。

労働者に配布をすれば周知に関して問題が起こることはないでしょう。

これに対し職場への提示を行う場合には、見やすい位置への掲示を意識しなければなりません。重要なのは労働者がいつでも内容を確認できるということであり、これが達成されない掲示方法は十分に周知がされているとは言い難いです。

可能なら掲示板に書面を貼り付けるのではなく、共有サーバーにアップロードして、社内ネットワークにアクセスすればいつでも好きに閲覧できる状態にしておきましょう。

就業規則作成時の注意点

就業規則の作成にあたっては、記載すべき事項の漏れが起こらないようにすること、法令や労働協約に抵触しないこと、そしてわかりやすく記載することに注意が必要です。

絶対に記載をしなければならない事項がある

就業規則には「絶対的必要記載事項」があります。

大きく①労働時間に関すること②賃金に関すること③退職に関することの3点です。

絶対的必要記載事項に関してはこちらの記事で詳しい解説しております。

法令や労働協約に反した内容にはできない

労働者の同意を得てさえいれば自由な労働条件が定められるというわけでもありません。

法令上の原則と例外を理解し、その範囲内で規定していく必要があります。

逆に法令に反していなかったとしても、労働協約として労働者-使用者間で約束を交わしたのであれば、その内容に抵触することはできません。

わかりやすく記載する

就業規則の内容は、誰が見ても理解ができるようにわかりやすく記載しましょう。専門用語を多用し、専門家しか理解ができないような内容では社内ルールの徹底が実現できません。

当然、労働者にとって不利な内容をあえて複雑な表現で記載するといった行為もしてはいけません。

表現が抽象的で複数の解釈ができてしまうような書き方も避けましょう。解釈をめぐってトラブルに発展するリスクがあります。