定款の作成は起業にあたって欠かすことのできない過程です。
株式会社でも合同会社でも、大規模であっても小規模であっても関係なく定款は作成しなければなりません。
そのため起業を考えている方は、定款に記載すべき事項とは何か、そしてその事項の意味についても知っておかなければなりません。
そこで、ここでは株式会社における定款の作成方法・記載事項について解説していきますので参考にしていただければと思います。
目次
株式会社における定款への記載事項
さっそく、定款に記載すべき事項について見ていきましょう。
もっとも重要なのは“絶対的記載事項”、そして起業時に着目すべきは“変態設立事項”です。なお、株式会社ならではの要検討事項についてもここで言及していきますが、ここで触れているのはあくまで代表的な事項に限ります。実際の定款はより詳細に作り上げていく必要がある点には留意しましょう。
絶対的記載事項
下表に記載の絶対的記載事項に抜けがあると、定款自体無効になってしまいます。
目的 | 事業内容を記載する。複数の事業内容を列挙しても良い。ただし外部の者から見て事業の目的が判断できる程度には具体性が必要。 |
商号 | 会社の名称を記載する。基本的には自由にネーミングできるが、「株式会社」の文言は入れなくてはならない。 |
本店所在地 | 主たる営業所の所在地を記載する。最小行政区画までの記載で十分とされているため、「丁目」「番地」の記載は不要。 |
出資財産の額 | 出資する財産の価額またはその最低額を記載する。定款認証の時点で記載しなくても良く、会社設立までに記載すれば良い。 |
発起人の氏名等 | 発起人の氏名または名称、そして住所を記載する。 |
発行可能株式総数 | 当該株式会社で発行できる株式の数を記載する。公開会社の場合には“設立時に発行する株式数”が“発行可能株式総数の4分の1”を下回らないようにしなければいけない。 |
変態設立事項
変態設立事項とは、会社立ち上げ時の金銭に関する特別の事項のことです。会社財産への影響が大きいことから規制がかけられている、以下4つの事項を指します。
現物出資 | 金銭以外の財産を出資する場合に記載が必要。現物出資ができるのは発起人のみ。 |
財産引受 | 会社成立を条件に、財産の購入等を約束したときに記載が必要。目的物である財産の内容およびその価額、譲渡人の氏名等の情報を記載する。 |
発起人に対する報酬等 | 発起人への報酬が発生する場合には記載が必要。報酬の内容、発起人の氏名等の情報を記載する。 |
設立費用の負担 | 会社が負担する設立費用について記載する。事務所の賃料、弁護士等の専門家に対する報酬などがその例。 |
株式譲渡に関する事項
株式は本来譲渡ができるものであり、その流動性の高さがあるからこそ大きな資金調達も実現可能となっています。
しかし株式が譲渡自由になってしまうと、それだけ経営権が外部に流出してしまうリスクも高まってしまいます。そもそも、同族経営している、小さい規模で活動している、という場合には株式を使った大規模な資金調達は検討していないと考えられます。
そこで関係のない第三者が経営に口出しをしてこないよう、株式の譲渡制限を設けるのが一般的です。そしてこの制限を設けるのなら定款への記載が欠かせません。
機関に関する事項
株式会社では「取締役」が必須の機関です。その他複数の取締役がいる場合には「取締役会」の設置も検討することになるでしょう。
さらに「監査役」「監査役会」「会計参与」などの機関も必要に応じて設置を検討します。
経営陣に対する監視体制を強くすればそれだけ対外的な信頼は得やすくなりますが、機動的な意思決定をするのが難しくなってしまいます。組織の規模や業界の相場などを勘案して機関設計しましょう。
役員の任期に関する事項
株式会社の役員には任期が定められています。
取締役や会計参与は「2年」、監査役は「4年」が原則とされています。
しかし、株式の譲渡に制限をかけている“非公開会社”であれば、この任期を最大「10年」に伸長することが可能です。
役員の変更や更新のたびに手間とコストがかかりますので、同じメンバーでの経営を想定しているのであれば長めに設定しておくと良いでしょう。
株主総会に関する事項
株主総会について、「定時株主総会をいつ招集するのか」「招集通知をしなければならない期間」「議決権の代理行使の可否」等を定款で定めていきます。
株主が増えてくると株主総会に係る労力が相当に増えてくるため、弁護士などの専門家に相談しつつ、どのように定めを置くべきか検討していきましょう。
株式会社では定款の認証手続が必要
定款の認証とは、公証人による定款のチェックのことです。認証を受けることで、適法な手続を経て定款が作成されたことを証明できるようになります。
合同会社などの持分会社では定款の認証手続が不要なのですが、株式会社を立ち上げる場合には作成した定款の認証を受ける必要があります。
認証手続の進め方
以下の手順に沿って手続を進めていきます。
- 本店所在地を管轄とする公証役場を探す
- アポを取り、公証人とのスケジュールを調整する
- 必要書類を準備して公証役場で認証を受ける
必要書類は発起人の本人確認書類(印鑑登録証明書)と所定の書式に従って作成された定款です。代理人により手続を行う場合には委任状も作成します。
なお認証の手数料は資本金の額に応じて変動します。
資本金の額が100万円未満なら3万円、300万円未満なら4万円、その他のケースでは5万円とされています。