株式会社設立手続の基本~定款の作成や株式の割当、設立登記など~

組織として何か事業を始める場合、“株式会社を設立する”という選択肢があります。他の会社形態よりも一般的で世間にも馴染みがあるため、新しく会社を立ち上げる際の第一候補に挙がってくることでしょう。

そこでこの記事では、株式会社を設立するときに最低限必要な、基本的な手続について解説していきます。

目次

株式会社を設立する基本的な流れ

株式会社設立にあたっては、以下の流れに沿い手続を進行させることになります。

定款の作成

まずは“発起人による定款の作成”が必要です。

定款とは会社の基本原則であり、株式会社であろうと持分会社であろうと変わらず必要となる存在です。会社の立ち上げにあたりこれを欠くことはできず、就業規則やその他社内規則の最上位にあたるルールです。
単に社内のルールを規定するだけでなく、対外的に当該会社がどのような組織であるのかを示すためにも役立ちます。

定款には様々な事項を記載することになるのですが、最低限の以下の事項については記載がなければ定款として無効になってしまいます(「絶対的記載事項」と呼ぶ)。

  • 目的
  • 商号
  • 本店の所在地
  • 設立時に出資する財産の価額または最低額
  • 発起人の氏名(または名称)と住所

なお発起人が複数人いる場合、定款には発起人全員の署名か記名押印が必要です。

定款の認証

定款に係る手続は発起人が内容を決めて終わりではありません。株式会社の場合には“公証人による認証”を受けなければなりません。公証役場で認証手続を経て、ようやくその効力が生じるのです。

なお、いったん認証を受けるとその後内容変更ができなくなるわけではありません。発起人のみで会社を立ち上げる発起設立であれば、特定の事項につき裁判所による変更決定があったとき、あるいは発行可能株式総数に関する変更なら認められます。

発起人以外も立ち上げに参画する募集設立であれば、上記事項以外でも創立総会の決議を経ていれば変更可能です。

そしてその変更に際しては認証を再度受ける必要はありません。

設立時発行株式に関する検討

株式会社の場合には“株式に関する事項の検討”も必要です。

例えば設立時発行株式総数株式の引受けについてです。

前者の設定については認証を受ける原始定款の時点で定められている必要はなく、会社が成立する段階で定められていれば良いとされています。
ただし株式に流動性がある公開会社として起業する場合には、「発行可能株式総数の1/4以上の設立時発行株式総数」でなくてはなりません。

後者についてですが、少なくとも発起人は1株以上の株式引き受けが必要であると覚えておきましょう。また、その他投資家などが参加する募集設立の場合にはより慎重に引受人の持株比率について検討することが大切です。

持株比率に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。

なお、募集設立の場合には①発起人による募集事項の決定、②通知の発出、③申し込みを受ける、④申込者への割当て、という過程を経ることになり、発起設立よりも設立手続は増えます。

出資の履行

株式の引受人、持株比率なども定まれば、出資の履行を行います。

これにより会社債権者への担保となる資本金の額が決まります。

設立時取締役の選任

設立時取締役、つまり株式会社として成立した後の経営者を選びます。

発起設立の場合には発起人が選任すれば良いです。

これに対し募集設立の場合には、出資の履行後開かれる創立総会にて選任することになります。創立総会は会社設立後の株主総会にあたる手続ですが、要件は株主総会における普通決議より厳しめに法定されています。

なお創立総会では発起人以外も参加することになるため、出資割合によっては発起人の思い通りの結果にできない可能性が出てきます。そのため重要事項については発起人が決定できるように調整しておく必要があるでしょう。

設立登記の申請

会社設立手続の締めは“設立登記の申請”です。

これは株式会社に限らず、合同会社や合資会社、合名会社などでも同様です。この手続を経てようやく法人格が得られるのです。

申請は登記所(法務局)にて行います。登記申請書の作成、添付書類の準備を行い、申請をします。登記については司法書士の専門分野ですので、少しでも不安がある方は信頼できる司法書士を探して依頼すると良いでしょう。

また、登記事項でもある資本金の額は節税効果を左右するものでもあります。いくらに設定するのがベストか、こちらに関しては税理士の助言を受けると良いでしょう。

株式会社の設立で必要な費用

起業するには費用もかかります。

主なものとしては“定款に係る費用”と“登記申請に係る登録免許税”が挙げられます。

定款については、公証人に支払うことになる認証手数料で5万円ほど、収入印紙代として4万円ほどが発生します。ただし電子定款として作成すれば印紙代はカットできます。

登録免許税については、資本金の額×0.7%で算定されるのですが、最低額が株式会社だと15万円とされています。

つまり最低でも20~25万円ほどは現金が必要なのです。