複数人の仲間で一緒に起業をすることもあるでしょう。それぞれが資金を持ち寄って株式会社を立ち上げることで、1人で立ち上げる場合に比べて大きな事業も始めやすくなります。
しかし2人以上での起業では持株比率の定め方に注意が必要です。経営を安定させるためにも、会社法の規定等と照らし合わせながら株式を割り当てていくことが大切です。
この記事で持株比率の設計の重要性、避けるべき持株比率の定め、最低限押さえておくべきポイントについて解説していきます。
目次
持株比率の設計ミスで起こる問題
株式会社では、出資額に応じて株主の構成が決まります。
発行済み株式に対し自分が保有する株式の割合が大きいとそれだけ大きな議決権を持つこととなり、株主総会で自分の意見を通しやすくなります。
そのため取締役として会社を代表する立場であったとしても、会社のあらゆる意思決定をできるわけではないのです。取締役自身が株式を持っていなければ株主総会で意見を通すことはできませんし、単に保有しているかどうかだけでなく、大きな持株比率を保っていなければなりません。
そこで持株比率の設計を間違えてしまうと、起業者であっても自分の思い通りに会社を動かすことができなくなります。
さらには自分が意見を通せないだけでなく、誰の意見も通すことが難しくなってしまうという事態に陥る可能性もあります。素早く事業活動を進めていきたいにもかかわらず、意思決定ができないような持株比率になることもあるのです。
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持株比率を分散させることのメリットとデメリット
迅速な意思決定ができなくなるのは、持株比率を分散させた場合に起こりやすく、このことが分散することによるデメリットと言えるでしょう。
しかし分散すること自体が常にダメなわけではありません。
複数の創業者で分散して株式を持てば、一部のメンバーによる勝手な行動を防ぐことができます。同じ割合で保有することにより公平感が生まれますし、軋轢も出にくくなります。
メンバー間で方向性が定まっているのであれば大きな問題が生じることはありませんし、互いに抑止力を働かせることができますので、その意味では安定的とも言えます。
ただ、やはり公平感だけに着目して同じ持株比率にするのは避けるべきです。あくまで一部メリットもあるというだけであり、あまりおすすめできる設計方法ではありません。
2人以上で安定した経営をするためのポイント
創業者、あるいは経営者2人以上で安定的に企業活動を進めていく上では、以下のポイントを押さえて持株比率を定めることが大切です。
役員の選解任ができるようにする
ポイントの1つは「役員の選解任の可否」です。
会社の業務を遂行する役員の選任および解任は、会社と株主にとって重要な関心事です。また、比較的頻繁に検討を行うことになる事項でもあります。
この事項の権限は、「議決権の過半数であるかどうか」で変わってきます。
仮に自分1人で議決権の過半数を持てば役員の指名を自分の独断でできるようになります。逆に他の誰かに過半数を持たれてしまうと、その者が自由に定められることとなります。
その他、過半数の議決権があれば基本的な事項はすべて決定させることが可能となります。そこで過半数を境に会社に対する影響力が大きく変わるということは知っておきましょう。
定款の変更ができるようにする
役員の選解任より大きな権限を要するのが「定款の変更」です。
定款は会社にとっての憲法のようなものであり、その内容が会社の在り方に直結します。そのため定款を変更するには普通決議では足りず、特別決議によらなければならないと会社法に定められています。つまり「議決権の3分の2以上」の賛成がなければ変更はできないのです。
逆に言うと3分の2以上の持株比率を有している者がいれば、その者は実質会社の支配者となることができます。
複数人での起業ではあるものの、「実質自分が立ち上げた会社であり運営に対する強い決定権を持ちたい」というのであれば3分の2以上となるよう株式を割り当てると良いでしょう。
持株比率の例
具体例を参考に、持株比率に起因する問題、定め方を見ていきましょう。
創業者が2人の場合
2人で会社を立ち上げる場合、「平等に半分ずつ株式を保有しよう」と考えるかもしれませんが、これは避けるべきです。
なぜなら普通決議の要件は「過半数」の議決権なのであり、「半数」ではないからです。意見が割れると普通決議を可決させることができなくなります。
そこで2人での創業をする場合、完全に同じパワーバランスとするよりも、片方をリーダーとして定めたほうが良いです。
その上で当該リーダーに過半数、可能なら3分の2以上の持株比率を充てましょう。これによりほとんどの事項を1人でも決定できるようになります。
創業者が3人の場合
創業者が3人の場合、平等に3分の1ずつ株式を割り当ててしまうと経営が停滞するおそれがあります。そこで少なくとも誰か1人は過半数を持つように設定すべきです。
ただ、メンバーが3人以上になってくると、誰か1人の独断で意思決定をすることに抵抗が生まれることもあります。また株主の数が増えるということはそれだけ利害を共にする人物が増えることにもなります。より多くの株主の意見を取り入れるほうが健全とも考えられ、不平不満が出ないようにも、権限を集中させるべきかはよく検討する必要があるでしょう。