多くの企業で、副業を認める流れが強まっています。そもそも、企業に勤務時間外の従業員について制限をかける権利はありませんし、基本的に副業に対し制約をかけないという体制は当然とも考えられます。
しかし、副業を認めることで企業側がリスクを負うこともあります。そのため、副業を認めることについて、どのようなメリット・デメリットがあるのか、把握しておくことが大事です。
目次
副業を認める企業側のメリット
企業が副業を認めることで一番恩恵を受けるのは従業員です。
一つの仕事に縛られることがなくなり、休みの日に別の好きな仕事をできるようになります。その分手元に入るお金も増え、生活を豊かにすることもできます。他の企業で勤めたり自分で事業を始めたりすることで、経済不況に陥ったときのリスクを小さくすることもできます。
企業としては、従業員がこのような恩恵を受けられることで「従業員満足度を高める」ことができます。このことは間接的に企業のメリットとして、良い効果が得られます。ストレスの少ない職場環境の方が従業員は高い成果を発揮できますし、職場の雰囲気が良くなると他の従業員にも良い影響が波及していきます。
逆に満足度が低く従業員が慢性的にストレスを抱えた職場だと、雰囲気も悪くなってしまい、従業員のポテンシャルを十分に発揮できなくなります。副業を認めるだけで万事解決するわけではありませんが、従業員の不満は解消されやすくなります。
また、「社会的な評価が高まる」というメリットもあります。
特に近年は働き方改革も注目され、企業が従業員に優しい環境を整えることが重要視されています。リモートワークの実現やその他柔軟な対応ができる企業であるほうが社会的にも高い評価を得ています。
副業に関しても同様です。これまでの規則を見直し、原則副業NGとするのではなく一部制約付きでも副業を原則として認めることで従業員のみならず対外的な評価も高まります。ひいては好感度が高まることで信頼も得やすくなり、一般消費者による商品・サービスの申し込みや企業間の取引も増やすことができるかもしれません。
そして、従業員が高い満足度を持ち、外部から見ても評判の良い企業となることで、「人材獲得」にも繋がります。今後人口減少によって人手不足が深刻化すると見られていますので、企業が継続的に活動していくためにも優秀な人材獲得に向けた取り組みが重要です。
副業を認めるということはその取り組みの一つでしかありませんが、できることから取り組むことで少しずつ企業を良い方向へ変えていくことができるでしょう。
副業を認める企業側のデメリット
企業側にデメリットも生じます。主なものとして以下が挙げられます。
- 情報流出のリスクが生じる
- 従業員に過負荷がかかるリスクが生じる
- 労働時間の管理に手間がかかる
- 就業規則の見直しなどをしないといけない
情報流出に関しては企業存続に関する問題ですので、導入にあたって必ず検討しなければいけません。
特に問題が顕在化しやすいのは、従業員が競業を営んだり、競合他社で副業を行ったりするケースです。企業の重要な秘密・ノウハウが漏れてしまうと大損害を被ります。そのため副業を認めるにしても、こういった問題が起こらないよう対策を取ってからでなくてはなりません。
また、副業を無理なスケジュールで行っている場合には従業員に大きな負荷がかかります。体調を崩すかもしれませんし、そうすると自社の業務をまともに遂行できなくなるおそれが出てきます。
なお、このことと関連して、労働時間の管理についても知っておく必要があります。もともと企業には労働時間を把握する義務が課せられており、労働時間に応じた賃金の支払いをしなくてはなりません。副業に関しても時間外労働の概念がありますし、副業先との情報共有など、企業には労働時間の管理について負担がかかります。
事務的な負担で言うと、導入に際しての就業規則見直しなども発生します。法令に抵触しないよう適切に各種ルールを修正していく必要があります。必要に応じて専門家のサポートも受けることになるでしょう。
副業を認めるにあたっての課題
企業が副業を認める場合によくある課題としては、前項で説明した「就業規則の定め」や「労働時間の管理」などが挙げられます。
単に「他の会社で従事しても良い」などと条項を設けるのではなく、法令で許されている範囲内で、上のデメリットやリスクを最小化するように定めなくてはなりません。
例として厚生労働省で作成された「モデル就業規則」を参考にすると良いでしょう。
https://www.mhlw.go.jp/content/000496428.pdf
無効にならないよう、自社に適した形で一部制約を設けましょう。就業規則に関してはこちらのページでも解説しています。
メリット・デメリットを見極めて上手く導入することが大切
ここでは代表的なメリットやデメリットを紹介しましたが、重要なのは自社の現状を踏まえて具体的に検討するということです。自社の事業内容や業務の進め方に即して何が問題となり得るのか、考えましょう。