【就業規則の記載事項②】相対的必要記載事項の内容を解説

一定以上の労働者を雇用する会社は、就業規則を作成しなければなりません。
就業規則には必ず記載をしなければならない事項のほか、任意に記載すれば良いとされている事項、そして“効力を生じさせるためには就業規則への記載が必須”とされている相対的必要記載事項があります。

ここではこの相対的必要記載事項について解説をしていきます。

目次

就業規則の相対的必要記載事項とは

就業規則を有効なものとするために絶対に記載をしないといけないのが「絶対的必要記載事項」です。

こちらのページを参照

これに対し、“就業規則に定める義務はないが、そのルールを有効とするには就業規則に定める必要がある事項”を「相対的必要記載事項」と呼んでいます。

具体的には以下の事項のことです。

  1. 退職手当
  2. 臨時の賃金や最低賃金
  3. 費用の負担
  4. 安全衛生
  5. 職業訓練
  6. 災害補償・私傷病
  7. 表彰・制裁

このそれぞれにつき以下で説明をしていきます。

相対的必要記載事項①:退職手当の定め

退職手当に関する定めを置く場合には、就業規則に明記をしなければその効力が生じません。

具体的には、退職手当の支給がある労働者の範囲や計算方法、支払い方法、支払い時期などのルールです。

なお、労働者の雇い入れをするときには賃金などの労働条件を書面で明示する義務が課されていますが、この賃金には退職手当は含まれません。

相対的必要記載事項②:臨時の賃金・最低賃金の定め

最低賃金に関する定めを置く場合や、
基本給のように毎月支給される賃金や上の退職手当などを除いた「臨時の賃金」についてのルールを設ける場合には、就業規則で定めを置かなければなりません。

例えば“賞与”です。

賞与・ボーナスの支払いに関しては、その計算方法や支払い方法などが明記されていなければなりません。以下のように記載する例があります。

―――――――― 記載例 ――――――――

(賞与)
第〇条 賞与は、下記の支給対象期間に在席していた労働者に対し、会社の業績等を考慮し、下記の支給日に支給をする。ただし、やむを得ない事由により、支給しないことがある。
 支給対象期間:〇月〇日~〇月〇日まで(支払日〇月〇日)
 支給対象期間:〇月〇日~〇月〇日まで(支払日〇月〇日)
2 賞与の額は、会社の業績および労働者の勤務成績等を勘案して労働者ごとに決定をする。

相対的必要記載事項③:費用の負担の定め

業務を遂行する上で必要となる費用は、原則として会社が負担をしなければなりません。

例外として労働者に負担をしてもらうのであれば、就業規則に定められていなければなりません。

近年だとテレワークを導入する例が増えていますが、その際の通信環境やパソコンなどのデバイスについても原則は会社負担でなければなりません。

ただ、当該労働者がすでに自宅に通信環境を整えていることがほとんどであり、プライベートと業務で費用を分けることも簡単ではありません。

対策としては、“会社が一定額を支給して、超過分のみ労働者に負担をさせる”とする定めを置くことが挙げられます。

―――――――― 記載例 ――――――――

(費用の負担)
第〇条 在宅勤務者が負担する水道光熱費および通信費用については、業務負担分として、毎月〇円を支給する。

相対的必要記載事項④:安全衛生の定め

安全衛生に関する定めとしては、例えば会社と労働者が守るべき事項を“遵守事項”として1つの条項にまとめたり、“健康診断”についての条項をまとめたり、他にも“ストレスチェック”のルール、“健康管理上の個人情報の取扱い”のルールなどをまとめることが考えられます。

遵守事項については、単に「労働者は会社と協力して労働災害防止に努めなければならない」といった抽象的な宣言を述べることに加え、具体的な禁止事項をリストアップしていくのでも良いでしょう。

健康診断やストレスチェックについては定期的に実施すべきこと、その結果に応じて必要な指導を行うことなどを定めましょう。

相対的必要記載事項⑤:職業訓練の定め

職業訓練について特にルールを設ける必要がある場合には就業規則に明記しておかなければなりません。

―――――――― 記載例 ――――――――

(教育訓練)
第〇条 労働者は、会社から教育訓練を受けるよう指示されたとき、特段の事由がない限り、教育訓練を受けるものとする。
2 前項の指示は、教育訓練が開始される〇日前までに通知する。

なお、教育訓練に関して性別を理由に差別的な取扱いをすることは男女雇用機会均等法により禁じられています。

相対的必要記載事項⑥:災害補償・私傷病の定め

災害補償に関しては、労働基準法や労働者災害補償保険法にもともとルールが定められており、就業規則に定めるまでもなく一定程度は労働者保護が図られています。

そのためこれらの法律に抵触しない独自のルールや、より手厚く保護する場合以外は、就業規則に特に規定を置く必要はありません。

これに対して、私傷病など、業務外の傷病扶助に関しては就業規則にて別途定める必要があります。

多くの会社では業務外の傷病があったときの“休職”についての定めを置いています。
休職とは、労働者側の個人的な問題により相当期間就労できなくなったときでも、労働者の身分は残したまま就労義務を免除する特別の取扱いのことを言います。
この休職を認める期間や事由を明記したり傷病手当金を支給するとの定めを置いたりしても良いでしょう。

相対的必要記載事項⑦:表彰・制裁の定め

労働者の士気を高める、会社の生産性を向上させる、といった目的で“表彰”の定めを置く例があります。

ただしこちらも相対的必要記載事項ですので、就業規則への記載が欠かせません。
どのような場合に表彰をするのか、リストアップをし、表彰の内容(単に賞状を授与するだけなのか、賞金も与えるのか)についても検討しましょう。

制裁規定は労働者との間で大きなトラブルに発展する可能性があるため、慎重に検討する必要があります。

懲戒”の条項を置き、懲戒の種類と具体的処分の内容を明記しておきましょう。
また、懲戒の事由についても明記しておかなければなりません。

例えば「正当な理由がないにもかかわらず、〇日以上の無断欠勤が続くとき。」などといった事由を複数挙げていきます。

特に近年はハラスメントに対する関心が高まってきていますし法整備もなされています。
セクハラ・パワハラなどについては厳正に対処する旨、対処の内容などを定め、さらにその内容を労働者に周知しなければなりません。