レイターステージにまで到達すると、ベンチャー企業にも持続的なキャッシュフローがあり、IPOやM&Aなどを視野に本格的な活動を行うようになります。
日本ではベンチャー企業のイグジットとしてIPOが比較的多く採用されますが、M&Aも状況に応じて検討することが大事です。
そこでこの記事では、M&Aにあたってベンチャー企業が知っておきたい、買収企業側のニーズなどを説明していきます。
目次
レイターステージにおけるイグジットの手法
ベンチャー企業が急成長を果たすには、投資家による出資が非常に重要です。
特にレイターステージにまで成長したベンチャー企業の場合には、VC等による多くの出資を得ていることも考えられます。
ただ、投資家もボランティアで出資するわけではありません。保有する株式の売却など、投資資金の回収を念頭に出資します。
投資資金の回収(イグジット、Exit)の手法としては、金融商品取引所への上場(IPO:Initial Public Offering)と合併や買収といったM&Aが挙げられます。
日本では比較的IPOが多く、M&Aに対しては消極的です。
IPOのほうがイグジットも容易で、M&Aよりも資金を獲得できるケースが多いこと、社内への説明が容易であることなどが主な理由として挙げられます。
しかし、アメリカなどではIPOよりもM&Aのほうが割合多く行われていますし、必ずしもIPOである必要はありません。状況に応じてM&Aも視野に入れることが大切です。
ベンチャー企業をM&A(買収)する意義・目的
それでは、ある企業、とりわけ大企業がベンチャー企業をM&Aとして買収をするケースを考えてみましょう。
M&Aを成功させるには買収側の目的、ニーズを理解することが非常に大事です。
まず、買収をする側の企業にとってのM&Aは、自前投資だと不可能な高成長を実現する手段として考えられています。
企業が大きな成長を目指そうとしたとき、一般的には「既存事業の成長」と「新規事業への参入」が考えられますが、これらを成功させる成長戦略として検討するのです。
既存事業を成長させるため
既存事業の成長という観点では、買収しようとするベンチャー企業の事業と自社の事業に相乗効果が生じるかどうかが着目されます。自社事業とのシナジーが得られるかがポイントとなります。
また、革新的な技術・事業かどうかもポイントです。
これらの条件を満たした場合にはM&Aが成立しやすいと言えるでしょう。
ただ、シナジーが得られると評価してもらうためには、ベンチャー企業の事業がある程度確立した状態でなければなりません。また、リソースに関しては大企業側のほうが大きいため、技術面で評価してもらうためには相当に優れたものでなければなりません。
なお、相乗効果を得て双方が成長を遂げるには、カルチャーギャップのすり合わせを行い、互いにコンプライアンスやガバナンスに対する理解を示すことが大切です。実際、買収側の企業がベンチャー企業として立ち上がっていたケースではギャップが少なく、円滑に手続きが進みやすいとされています。
新規事業に参入するため
もう1つの目的としては、「新規事業への参入」あるいは「事業領域を早急に転換させること」が挙げられます。
ただし買収側の企業の新規事業をベンチャー企業が行っている場合、ベンチャー側の技術やノウハウに関する評価が難しいです。
そのため新規事業参入を目的としたM&Aの場合には買収に先立って出資を行うことが多いです。出資から始めることにより、ベンチャー側の評価をしようとしているのです。
M&Aにあたってベンチャー企業に求められること
買収企業側のM&Aの目的にもいくつかありますが、基本的に求められるのはベンチャー企業が持つ「人材」「技術」「顧客」です。
「人材」とはつまり、ベンチャー企業の経営者や技術者のことです。
近年だと特にIT系人材の不足が顕著で、将来的にも人材の獲得が重要視されています。その中でもAI関連では人材獲得の競争が激しいと言われています。そこで、買収によってこれら人材の確保を狙うケースがあります。
「技術」としては、スキルやノウハウ、さらには知財なども含んで買収することがあります。
「顧客」としては、ベンチャー企業が抱えるユーザーやライセンスなどがあります。特にSaaS系のベンチャーを買収する場合、ユーザー数が評価を大きく左右することになります。
また当然、これら人材や技術だけでなく、販路なども広く含むパッケージとして事業そのものが求められることもあります。ただしベンチャー企業の場合には事業が確立していないことも多いですし、ガバナンス体制がまだ整備されていないことも多いです。他の中小企業にはない、ベンチャー独特の課題もあるため、M&Aを成功させたいベンチャー企業としては相手方が課題と感じるのはどのような点なのか把握することが大切です。
その上で経営人材や技術者、ノウハウや知財、顧客等に着目し、高い評価が得られるような事業遂行を心がけると良いでしょう。