【命取り】中小・ベンチャーにとってのコンプライアンス

この記事は2020年12月14日に書かれました。

皆さんは、これまで一回は新聞などでコンプライアンス関連の不祥事に関する記事を目にしたことがあると思います。

データ流出やSNSの不適切投稿、過労死、パワハラなど、1年もあれば何らかのコンプライアンス不祥事が記事になっています。

しかし、新聞記事やニュースとして報道されているのは、氷山の一角に過ぎません。

報道されるのは大企業で、その中でも特に有名な会社ほどクローズアップされる傾向にあります。

なぜ、大企業のコンプライアンス不祥事ほど報道されるのでしょう?

その答えはいくつかあると思いますが、

「珍しいから」

会社が大きければ大きいほど、社員や株主のためにガバナンスやコンプライアンスに気を遣っており、専門の部署を設けている会社も少なくありません。

そんな大企業が起こす不祥事だからこそ、珍しく読者が食いつくため、報道するのです。

では、なぜ中小企業やベンチャーのコンプライアンス不祥事はそこまで報道されないのでしょうか?

それは、大企業の反対、つまり

「珍しくないから」

です。

中小企業やベンチャーはまだ社内体制が整っていないことが多く、コンプライアンス違反は日常茶飯事です。

細かい点を挙げると、例えば勤怠管理で、45分や60分の休憩時間を自動で控除している会社が多く見受けられますが、これも実はコンプライアンス違反になり得るのです。

また、大企業と中小・ベンチャーにおけるコンプライアンス不祥事の違いは、事象が起きる確率や頻度だけではありません。

一番の違いは、「コンプライアンス不祥事が起こった後、どれだけ耐えられるか」です。

大企業はその規模や有名度合いに比例して、受ける社会的制裁や信用失墜のインパクトも大きくなりますが、かといって取引先がすべてなくなることは意外と少なく、売上やキャッシュは耐えられることが多いのです。

一方、中小・ベンチャーは報道がされない分、社会的なダメージは少ないですが、些細なコンプライアンス不祥事が命取りになるのです。

中小・ベンチャーの中には大企業を受託先に持っている会社も多くありますが、不祥事が起きれば大企業は委託先を簡単に変えてしまいます。そうすると、中小・ベンチャーにとっての生命線が絶たれることになります。

また、中小企業は横の繋がりが強い傾向にありますが、少しでも不祥事を起こせば悪い話がその環の中で一気に広がり、一瞬で仲間はずれにされる可能性もあります

つまり、中小・ベンチャーほどコンプライアンス遵守・リスク管理に気を配るべきなのです。

経営者にとっては、まず売上や利益が優先される風潮にありますし、決して間違ってはいませんが、売上だけでは会社は長く続きません。

企業を飛行機に例えると、売上とコンプライアンスの両翼が揃って初めて長く安定した飛行が可能となるのです。

また、売上規模で比べると、大企業は大型旅客機、中小・ベンチャーはセスナです。

大型旅客機(大企業)はある程度高度が落ちても最初から高い位置にいるため耐えられますが、セスナ(中小・ベンチャー)は低い高度で飛んでいるため、地面が近く、ある程度高度が落ちれば耐えられず墜落(倒産)してしまうのです。

売上至上主義で片翼に偏った運転をしていると、ジワジワとリスクの影が伸び、いつしか急にエンジントラブルを起こしてそのまま真っ逆さま、なんてことが起こりかねません。

そうすると、その乗客(社員、顧客、株主など)は一気に危険にされられるため、二度とその飛行機には乗らなくなるでしょう。

そんな最悪の事態を避けるためには、日々のコンプライアンス遵守に対する意識が重要になってきます。

「売上が上がってきたから、コンプライアンスに注意しよう

「社員が増えてきたから、コンプライアンスに注意しよう

「資金調達に成功したから、コンプライアンスに注意しよう

このように、会社にとって追い風となる状況にあるときこそ、守りを堅める必要があります。

せっかく良い技術を持っていても、大企業との取引を受託しても、優秀な社員を雇っても、不祥事によって中小・ベンチャーは一瞬で大ダメージを受けてしまいます。

そうならないためにも、まずは目に見えないリスクを見える化し、優先順位をつけて着実に解決するのが賢い経営と言えるでしょう。

日頃から売上とコンプライアンスの両翼を管理することで、急なリスクを発生させない、仮に発生してもすぐに体制を立て直せるような経営基盤を作りましょう。