この記事は2020年12月2日に書かれました。
今回は、セクハラについて考えましょう。
ここ最近、セクハラをはじめとしたハラスメント問題は重要視される傾向にあるため、露骨なセクハラを目にする機会は減ってきたのではないでしょうか。しかし、見方や捉え方によってはセクハラになるような事象が変わらず起きていることも事実です。
今回は、言葉のセクハラによって起きた事例をみていきましょう。
福岡セクシャルハラスメント事件
福岡地裁 平成4年4月16日
【主張】
Aさんは、Bさんが社内外でAさんに関する性的な悪評を吹聴するような嫌がらせを行い退職させたとして、X社に対して損害賠償を求めた。
【経緯】
・BさんはAさんの元上司であり、関係も良好であったが、仕事上の些細なことで関係が悪化した
・Bさんは、Aさんを敵対視するようになり、Aさんに関する12個の性的な悪評を振りまいた。
・Bさんは、Aさんに対し直接的に性的な中傷を行い、退職を強要した。
・X社の経営層は上記の問題を知りつつ、あくまで個人的な問題として両者の話し合いによる解決を指示するにとどまった。
【なぜ会社は負けたのか?】
❌経営層が個人的な問題と認識し、放置した。
➡︎職場環境を調整する配慮を怠ったと判断
❌経営層からAさんに対し、「話し合いで解決しなければ退職してもらうしかない」「ここは男性(Bさん)を立てないと」等の発言があった。
➡︎被害者の退職をもって問題を解決しようとしたずさんな考えがあり、男女不平等の発言は会社の責任にあると判断
【会社はどうすれば良かったのか?】
⭕️セクハラが起きた際、経営層がその具体的な内容を把握する
⭕️セクハラ防止のための研修および教育を徹底する
⭕️問題発生時にはできるだけ迅速に対処する
⭕️被害者の心情に配慮した対応を心がける
セクハラには、解雇や転勤など不利益な扱いを受ける「対価型セクハラ」と、終業環境を害する「環境型セクハラ」の2種類があります。
また、どのような行為がセクハラに該当するかについて、厚労省は「労働者の主観を重視しつつも、(中略)平均的な女性(男性)の感じ方を基準とすることが適切である(平成18年厚生労働省告示615号)」と定めています。
今回の事例は、噂を流すことによって会社にいづらくさせる典型的な「環境型セクハラ」なので、Aさんの主観と、平均的な女性の感じ方という客観の両面において不法行為が認められました。
厚労省の基準も曖昧なため、どこからどこまでがセクハラかといった明確な線引きは難しいのが現状です。しかし、セクハラ事案の損害賠償は高額化の傾向にあるため、どんな些細なことでも会社が被害者にしっかりと寄り添い、迅速かつ誠実に対応する必要があると言えるでしょう。