企業活動を始める上では、儲けを増やすだけでなく、法律に則った運営を心掛けなくてはなりません。そこでシード期の段階から、設立からバックオフィスのこと、また投資に関わるルールなどの理解に努めましょう。
こうしてコンプライアンスを徹底していることは対外的な信頼にも繋がり、取引先の獲得や資金調達のためにも役立ちます。
目次
シード期での注意点1:株式会社の設立手続
事業を始める場合、個人企業でも構いませんが、規模を大きくするのであれば会社を設立したほうが良いです。
そして会社の設立といってもいくつかのパターンがあります。最も代表的なのは「株式会社」で、最近は「合同会社(LCC)」を設立するケースも出てきています。
ただ、事業を急拡大させ、多くの資金を集めるのであれば株式会社がおすすめです。
株式の発行により広く資金を調達しやすいからです。
ただし、それぞれに法規制の内容が異なりますし、意思決定のスピードにも差が出てきますので、会社法などを参照し、組織運営においてどのような違いがあるのかは把握しておかなくてはなりません。
株式会社の設立においては「発起設立」と「募集設立」の2つの手続があり、前者は発起人(起業家)のみで設立。後者は広く投資家の出資を募るケースです。
事例として多いのは発起設立ですが、多くの資金を得て急速に拡大させるのであれば募集設立として手続きを進めるのも手でしょう。
ただ、募集設立は第三者が関与してくるため、手続が厳格になってきます。
そのルールに関しても会社法で規定されています。
当然、株式の引受けを募るため、引受人に対して通知を出さなければなりませんし、その際の割当なども創業時点で行わなければなりません。さらに、創立総会も開催し、会社設立の方針等を決めていかなくてはなりません。
発起設立では発起人のみが手続きに参画するためスピーディに立ち上げが進められるのですが、募集設立では創業の前段階から実質株主総会にあたる手続を要するのです。
シード期での注意点2:企業法務の知識
ベンチャー企業に限った話ではありませんが、スタートアップ企業でも社会保険や労働保険、就業規則の作成といった企業法務への配慮は欠かせません。
資金の問題から雇用ではなく業務委託で仕事を進めていくことも考えられますが、その場合でも契約内容の設定、契約書の作成といった企業法務が欠かせません。
シード期ではできるだけこのあたりへのコストが少なくて済むよう努めるべきですが、最低限の体制は整えておかなければ多大なリスクを背負うことにもなりかねません。
なお、許認可の取得に関しては行政書士や弁護士などの専門家も活用しましょう。コストはかかりますが、確実性を高められ、余計な労力や時間をかけずに済みます。
シード期での注意点3:株式の種類や持株比率
株式を活用した資金調達をすることも考えられますが、発行する株式の種類や、持株比率には十分注意しなければなりません。
「シード期で注意したい株式に関する知識」はこちらのページを参照してください。
シード期での注意点4:外為法による規制
海外投資家からの資金調達が視野に入っているのであれば、外為法(外国為替及び外国貿易法)にも留意しましょう。
外為法は近年法改正が相次いでおり、数年前から知識がアップデートされていない場合には要注意です。改正の動きが早く、今後も社会情勢を反映させ、ルールが改訂される可能性があると考えておかなくてはなりません。
近年の改正では「対内直接投資」(海外から国内企業に対する直接投資)の促進を狙って事前届出免除制度が導入され、事前届出の対象が見直されました。
ただ、実際に事前届出が免除されるかどうかは案件ごとに判断しなければなりません。
ベンチャー企業はVCなどから投資を受ける際、事前届出業種に該当するのか、その投資家が外国投資家なのか、といったことを確認の上進めていかなければなりません。
シード期での注意点5:プライバシー関連の法令
個人情報やプライバシーに関する法令は、ニッチな領域のようで実はそうではありません。世間的な注目度が高く、どんな企業にも関係のあることです。
世界的にもプライバシー保護は注目を集め、個人情報の取扱いに関する法規制は厳格化が進んでいます。
特に重要なのはEUの「GDPR(一般データ保護規則)」です。
EU発祥ですが日本企業にも適用され得る規則で、違反に対して高額な罰金が課されるおそれもあります。そのためシード期からGDPR、個人情報保護法等への対応をしていかなくてはなりません。
そこで実務としてまず実行すべきことは、「プライバシーポリシーの見直し」、そして個人情報の取得時に「プライバシーポリシーに同意をさせること」です。まずはここに取り組むことで大きなリスクを避けやすくなるでしょう。
逆に言えば、投資や技術貸与をしてくれる企業はこの流れを受けデューデリジェンスの段階からプライバシー保護、GDPRへの対応を評価してきます。自社への投資リスクが小さいことを示すためにもプライバシー関連の法令には十分配慮しましょう。