職場環境是正に向けて、社会全体で様々な取り組みが行われています。企業としては特に法改正の内容の把握が大事で、同じ運用をいつまでも続けているといつの間にか法に抵触しているという状況も起こり得ます。
ここでは「同一労働同一賃金」に関して言及し、改正のポイントを解説していきますのでぜひ参考にしてください。
目次
同一労働同一賃金とは
まずは簡単に言葉の意味を説明しておきましょう。
これは読んで字のごとく、「同じ仕事をしたのであれば雇用の肩書も関係なく同じ給与が支払われるべき」という考え方を意味します。
正社員や派遣社員、契約社員、パートタイマーなど様々な形態がありますが、この肩書の違いのみで不平等な扱いをすべきではないという考えに従い、是正を図るべく法改正がなされています。
労働契約法、パートタイム・有期雇用労働法の改正の概要
従来、正社員が優遇され派遣やパート、契約社員などが良くない待遇の下で働くという状況が社会全体にありました。これは会社ごとの運用の問題でもありますが、法律の内容にも問題がありました。平等を実質的に確保する仕組みになっていなかったのです。そこで近年は、パートや派遣だからといってそれだけの理由で賃金に差があるのはおかしいといわれるようになり、社会問題にもなりました。各々の会社がこれを解消するような運営をすれば解決はできるのですが、なかなかそのような理想通りにはいきません。
そこで重要なのが法の整備です。法改正をすれば、画一的に日本中の企業がその内容に従った体制を整えなくてはなりませんので、従業員にとっては好ましい環境に変わることが期待されます。しかしながら企業としては改めてルールの策定をしたり、一定の義務を果たしたりしなくてはならず、特に移行期には大きな負担がかかります。
以下が変わった内容をごく簡単にまとめたものになります。
- 不平等をなくすためのルールを置くこと
- 扱いの差に関する説明の義務が課される
- 行政による、不平等の是正を目的とする措置が取りやすくなった
それぞれの内容を見ていきましょう。
改正ポイント①均衡待遇・均等待遇の規定
正社員と非正規雇用の者との間で、基本給に限らず賞与やあらやる待遇に関して「不合理な差」を設けることが禁止となります。
契約社員もカバー
契約社員など、有期雇用で働く者に対し、従来均等待遇規定(仕事内容等に対する差別的取り扱いを禁ずる規定)が置かれていませんでした。また均等待遇規定(不当な待遇差を禁ずる規定)に関しても、具体的にどのようなものがダメなのかが明確ではないという問題を抱えていました。そこでこの部分に関して法改正がなされています。
=改正後=
- 契約社員も「均等待遇規定」の対象になった
- 「均衡待遇規定」の内容を明確に
- 各規定の解釈・判断も行いやすくするため、ガイドラインを策定
派遣社員に対する運用
派遣社員に関しても、従来「均等待遇規定」「均衡待遇規定」の両方が置かれておらず、配慮義務の規定しかありませんでした。そこで前項同様こちらも改正がなされています。
=改正後=
- 派遣社員に関して①均等・均衡待遇または②労使協定による待遇、のいずれかの確保を義務化
- ①に関しては、「待遇に関する情報提供の義務」「教育訓練や福利厚生施設の利用、職場環境整備などの規定強化」などが課される
- ②に関しても、「労働者の過半数で組織される労働組合」が協定を締結するなど、一定要件を満たした上でなければならないとする
- 派遣先事業主は、派遣料金について上記規定を順守できるよう配慮義務を創設
- 解釈を明確にするためのガイドラインを策定
改正ポイント②待遇に関する説明義務
従来、待遇差等について、派遣社員や短時間労働者などは説明を求めることができていましたが、契約社員等からの求めに対して企業は応じる義務がありませんでした。また説明の対象も「当人の待遇」のみであり、正社員との差やその理由についてまで説明する必要はありませんでした。
しかし改正後は契約社員等に対しても説明の義務が生じるようになり、正社員との待遇差など、説明の対象も広がりました。さらには説明を求めたことに対する不利益取扱いを禁止する規定も置かれています。
改正ポイント③行政による措置
従来、行政による助言や指導等の規定も契約社員等に対しては置かれていませんでした。調停などの裁判外紛争解決手続に関しても一部の非正規雇用労働者に関する規定しかなかったのです。
そこで改正後は以下のように変わります。
- 行政の事業主に対する助言や指導等ができる範囲を広げる
- 裁判外紛争解決手続(ADR)の根拠規定も整備
- 「待遇差の内容等に関する説明」も行政ADRの対象に
企業は平等な取扱いをするだけでなく規定の整備も必要
企業は従業員に対し、正社員かどうか問わず不平等な取扱いをしてはいけません。必要に応じた差を設ける場合でも、その理由の説明を求められれば応じなければなりません。
行政ができる措置の範囲も広がりましたし、今後はより不合理な運用をしている企業に対する取り締まりは強くなることでしょう。