現物出資で会社設立をするメリット・デメリットについて解説します

会社を設立にあたっては出資を行う必要があります。いくつか出資の方法あり、そのうちの1つに「現物出資」というものがあります。

ここではまず現物出資とは何かということに触れた上で、設立時の出資を現物出資として行うことにどのようなメリットとデメリットがあるのかを解説していきます。

目次

現物出資とは何か

現物出資とは、「金銭の代わりに物で出資をすること」を指します。

会社設立をするとき、発起人が自己資金として金銭を用意することがほとんどです。しかし法律上、金銭以外であっても出資の目的とすることも認められているのです。

会社設立時の現物出資ができるのは発起人のみ

現物出資自体は法的に認められている出資方法ですが、誰でもできるわけではありません。

会社設立時の現物出資ができるのは発起人のみです。

よって、発起人以外が登場する「募集設立」の場合、発起人以外の株式引受人が現物出資をすることは認められません

現物出資の対象となる物の例

現物出資の対象となる物の例として、以下の物が挙げられます。

  • パソコン
  • 株式
  • 自動車
  • 土地
  • 建物
  • 特許権

なお、譲渡ができる性質のものでなければ現物出資できませんので、名義変更ができない預金あるいは保険証券、その他労働やノウハウといった無形のものも対象から外れます。

現物出資で会社設立するメリット

会社設立の際に現物出資をするメリットとして、大きく以下4つの事項が挙げられます。

資本金の額を大きくすることができる

メリットの1つは、「資本金の額を大きくすることができる」ということです。

現金だけで資本金を用意しようとすると大変ですが、不動産や自動車なども使えるとなれば大きな自己資金を用意できない方でも資本金額を大きくしやすくなります。

資本金が大きいことにより、許認可の取得が求められている業種でも要件をクリアしやすくなりますし、対外的な信用も得やすくなります。

減価償却による節税効果が得られる

現物出資をした資産は設立後の会社の固定資産となり、その後減価償却費にて経理処理することができます。

その結果計算上の利益を小さくすることができ、「節税効果が上がる」というメリットが得られます。

例えば100万円相当の自動車を現物出資したとしましょう。これを5年間で減価償却する場合、概算で1年あたり20万円の経費が増える扱いとなり、法人税の納付額もいくらか下がることになるのです。

なお細かな計算に関して、実際に現物出資をする前に税理士に相談をしておきましょう。

事業に必要な物の調達コストを下げられる

事業に必要な物がある場合、これを設立後にすべて購入していくとなれば大きなコストが発生します。しかし現物出資として発起人が会社に譲渡することで「調達コストを下げることができる」というメリットが得られます。

現金がなくても会社設立ができる

現物出資という選択をすることで「現金がなくても発起人という立場になれる、会社設立ができるようになる」というメリットが得られます。

発起人は必ず1株以上を引き受けなければならないところ、現金で対応したくないという場合でも現物出資により株式の引受けができるようになるのです。

現物出資で会社設立するデメリット

現物出資による会社設立のデメリットとしては、大きく以下3点が挙げられます。

現物出資に係る手続が複雑

デメリットの1つは「複雑な手続が必要」ということです。

作成しなければならない書類が増え、名義変更の手続なども行わなければなりません。単に現金を使う場合に比べて作業が大変になってしまいます。

出資する物の価額によっては検査役の調査を受けなければならず、さらに手間やコストがかかってきます。

こうしたデメリットを最小限にとどめるためには、弁護士や税理士のサポートが欠かせません。代理で任せられる手続や必要書類の準備などはやってもらうことができますし、さらに最適な形で現物出資ができるようになるでしょう。

会社にキャッシュがなく資金繰りが大変

現物出資をすれば現金を用意することなく会社を立ち上げることができるのですが、結果としてキャッシュが少なくなると資金繰りが大変になっていまいます。

現物出資により大きな資本金額とすることができても、手元にキャッシュは残らないからです。

そのため立ち上げ当初のキャッシュを用意するため、別途資金調達をするための計画を立てておくことが大切です。

出資者にコスト面での負担が生じる

現物出資により立ち上げ後の会社が備品調達等の負担をする必要はなくなりますが、出資者個人にとっては負担がかかります。

例えば現物出資によって譲渡所得が発生したり、課税売上となり税金の負担が発生したりします。

そのため、出資を受ける会社と出資をする発起人側双方のメリット・デメリットを考慮し、全体としての費用対効果を評価していくことが大切と言えます。