顧客情報が蓄積してその情報を有効活用することができれば、さらなるサービスの向上、ニーズに即したサービスの提供などが実現されます。
しかし顧客情報を保有するということにはリスクが内在していることも忘れてはいけません。大事に保管し続けなければ、情報流出により多方面に被害が生じることがあるからです。
この記事で、顧客情報の流出に伴うリスク、そして企業が取るべき基本的な対策を説明していきますので、ぜひ参考にしてください。
目次
顧客情報が流出するリスクとは
顧客情報が流出すると、一次的には当該顧客に対する被害が生じ得ます。
悪意ある第三者に情報を利用され、不正アクセスなど様々な危害が及ぶことが想定されます。
また、情報を流出させてしまった企業自身にも被害は発生します。
1つは「社会的な信用の失墜」です。
たった1度の情報漏洩でも企業イメージは一気に悪くなってしまい、顧客離れが進むことが想定されます。
その結果、「業績の悪化」が起こります。
情報漏洩の事故処理を済ませたとしてもすぐに離れた顧客が戻ってくるわけではありません。そのため売上の低下や赤字が長期的に続くおそれがあります。
さらに、「経営責任の追及」を受けることもあります。
企業が十分に対策を講じており、その後の対応も迅速で真摯であればこのリスクは避けることができるかもしれませんが、最終的に経営者が辞任に追い込まれる可能性もあります。
1つのインシデントで大きな損失を生むリスクが大きくなっている
顧客情報の流出によるリスクは近年大きくなっていると考えることもできます。
情報セキュリティに対する社会的な意識が高まっているということも理由として挙げられますが、特にここで注視したいのが「業務システムによる情報の一元管理機能」です。
横断的な業務遂行を実現するためにも、情報の一元管理は欠くことのできない必須の機能となっています。今や特別な機能というものでもなく、基幹システムであれば仕様として標準的に備わっています。
しかしながら、顧客情報を集中管理することでリスクも集中してしまいます。もちろんセキュリティ水準の高いシステムであればそう簡単にすべての情報を抜き出せるわけではありませんが、1つのインシデントにより大ダメージを受ける可能性があることは認識しておかなければなりません。
顧客情報が流出した事例
ここ数年を見返すだけでも、規模の大きな顧客情報流出の事件はいくつも起こっています。
例えば2020年には大手コンサル企業において数百万件もの顧客情報を紛失したという事件が起こりました。顧客情報を管理するシステムに利用していた磁気テープの誤廃棄がきっかけであり、システム面のみならずヒューマンエラーを防ぐことの重要性が示された事件でもあります。
また、2019年にはネット上に誤って顧客情報を開示してしまったという事件も起こっています。システムの設定ミスによる事故であり、操作ミス1つでも大きな問題に発展し得ることが示されました。そのためヒューマンエラーを防ぐことはもちろん、これを防げるようなシステム設計にすることも重要であると言えるでしょう。
顧客情報流出の予防に向けた企業の基本対策
顧客情報流出の予防、そして情報漏洩から生じるリスクを抑えるために重要な、企業が取るべき基本対策を説明していきます。
自社だけで対応するのが難しいこともあるかもしれませんので、積極的に専門家を利用することをおすすめします。
個人情報保護法への準拠
まずは個人情報保護法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=415AC0000000057)で規定されているルールを理解し、適法な企業活動ができる体制を整えましょう。
最新の法令を確認し、個人情報の利用目的・利用方法・取得方法・安全管理・第三者提供等に関する規定に従いましょう。
セキュリティポリシーの策定
セキュリティポリシーを策定することで、企業の取り組みの方向性などを示すことができます。顧客としても、セキュリティポリシーが適正に定められ、公開されていることで、安心して取引を続けることができるようになります。
アクセス権限の設定
どれだけ堅牢なシステムを利用していても、内部の犯行が起こってしまうと情報漏洩を防ぎようがありません。
そこでアクセス権限を持つ者と持たない者とに分け、特にリスクの大きな情報に対しては特定の人物しかアクセスできないように設定しておくべきです。
このことはシステム上の話のみならず、物理的なセキュリティ対策としても重要なことです。例えば資料の持ち出しやコピー、特定の部屋や端末の利用など、誰もが自由に扱える状態にしておくのではなく、必要に応じた制限をかけるようにしましょう。
退職後の従業員による情報漏洩も起こり得ますので、こちらの記事も参考にしてください。
不正アクセスを防ぐセキュリティソフトの活用
外部の者が勝手に社内システムにアクセスできないようファイアーウォールを設置したり、ウイルス対策ソフトを導入したり、対外的なセキュリティ水準も高める必要があります。
ただし年々サイバー攻撃のレベルも上がってきていますので、完全に防ぐことは難しいかもしれません。
そのためインシデントの発生を想定し、ログ管理機能の備えや、損害賠償に備えた保険への加入、事後対応のマニュアルの作成も進めておくべきでしょう。